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客先常駐プログラマーが身につけにくい4つのスキルと、その補い方

2020年5月18日

客先常駐プログラマーが身につけにくいスキル

「客先常駐(SES)で何年も働いているのに、市場価値が上がっている気がしない」

そう感じている現役プログラマーは少なくないかもしれません。私自身、メーカーのインフラ系ソフトウェア開発に客先常駐として入っていた時期があり、似たような違和感を抱えていたことがあります。

この記事では、客先常駐プログラマーが構造上どうしても身につけにくい4つのスキルと、現職にいながらでもそれを補っていく方法を、私の体験とAI時代の観点を踏まえて整理します。

なお、客先常駐で現在働いている方を否定する意図はまったくありません。個人の能力や努力ではなく、商流とポジションの構造の話としてお読みください。

客先常駐プログラマーが身につけにくい4つのスキル

結論からお伝えします。客先常駐(下請け・準委任・派遣)の立場では、構造的に下記の4つのスキルを業務経験として積みにくい傾向があります。

ポイント

  1. プロジェクトマネジメント能力
  2. 共通ライブラリ・基盤設計の能力
  3. 新技術(AI・クラウド等)の実務経験
  4. 業務ドメイン知識と要件定義力

特に4つ目の業務ドメイン知識と要件定義力は、AI時代において「AIに代替されにくい力」として相対的に価値が上がっていると感じる領域です。客先常駐の立場でも意識的に取り組めば伸ばせますが、構造的にチャンスが少ないという前提を知っておくと、戦略が立てやすくなります。

 

なぜ身につけにくいのか(構造的な理由)

4つのスキルがなぜ客先常駐の立場では身につきにくいのか、それぞれ理由を解説します。

①プロジェクトマネジメント能力

プロジェクトマネージャー(PM)のポジションは、発注元の正社員が握っていることが多いです。

大手SIerのように自社で受託案件をまるごと請け負う立場であれば、自社内でPMを立てるので、若手のうちからPMアシスタント→サブPM→PMとステップアップしていくキャリアパスがあります。

しかし客先常駐の場合、お客様(発注元)のソフトウェア開発の「お手伝い」という位置づけになりやすく、よほど特殊な事情がない限り、PMのような中核ポジションは任されにくいです。

結果として、進捗管理・要員配置・リスク管理・予算管理といったPMスキルが、実務経験として積みにくくなる傾向があります。

②共通ライブラリ・基盤設計の能力

複数プロジェクトで使い回す共通ライブラリやアーキテクチャ基盤の設計も、客先常駐者には回ってきにくい傾向があります。

共通ライブラリの目的は、おおまかに以下の2つです。

  • 似た製品間で共通処理を一本化して、流用コストを下げる
  • コピペコードをなくして開発効率と品質を上げる

ライブラリや基盤の設計を任されるには、技術力に加えて複数プロジェクトのシステム構造に対する横断的な知見が必要です。これは普通、長期間その会社にいる正社員のほうが任されやすい傾向があります。

③新技術(AI・クラウド等)の実務経験

AI(生成AI・LLM・機械学習)、クラウド(AWS/Azure/GCP)、コンテナ(Kubernetes)、リアルタイム系などの注目技術を使った新規プロジェクトは、客先常駐の立場では担当しにくい傾向があります。

理由はシンプルで、客先常駐に回ってくる仕事の多くは、発注元の正社員が手を回しきれない範囲、あるいは長期的に外部に任せたい範囲になりやすいからです。

  • レガシーシステムの保守・運用
  • 仕様変更が頻繁な領域のコーディング
  • テスト工程・障害対応

これらは外部に出したほうが費用対効果が高いと判断されやすい仕事です。一方で正社員側は、AIや新クラウド技術といったこれから10年20年の主力になりそうな領域のプロジェクトに中核メンバーとして配属されることがあります。新技術の習得スピードはベテランも新人もそれほど差がないため、若手に専門家になってもらったほうが長期的な投資対効果が高いと考えられているからです。

つまり、客先常駐側は既存技術の保守、発注元社員は新しい技術の開発という分業が起きやすい構造があります。

④業務ドメイン知識と要件定義力

2020年にこの記事を最初に書いたときには含めていなかった4つ目ですが、AI時代を迎えた今、最も意識したい項目だと感じています。

業務ドメイン知識(銀行業務、医療業務、製造業の生産管理など、顧客の業務そのものに関する知識)と、それをもとに要件を定義する力は、客先常駐の立場では蓄積しにくいスキルです。

理由は2つあります。

  • プロジェクトを転々とすると、1つの業務ドメインに腰を据えて取り組む時間が短くなりがち
  • 上流工程(要件定義・基本設計)は発注元やプライム側が握っているため、要件定義の議論に参加しづらい

これがなぜAI時代に重要かというと、コーディングや単純なテスト作業は生成AIが補助できる範囲が広がっており、「何を作るべきか」を顧客と一緒に決められる人材の相対的価値が今後上がっていくと考えられているからです。

要件定義は、人間同士の信頼関係・業務知識・暗黙知の理解が必要で、現状のAIだけで完結させるのは難しい領域です。客先常駐の立場が続くと、ここの経験を積む機会がどうしても少なくなりがちです。

 

客先常駐にも独自に身につくスキルがある

誤解のないようにお伝えすると、客先常駐すべてが不利になるわけではありません。私自身、客先常駐時代に身につけたスキルもあります。

  • さまざまな現場・お客様に対応するコミュニケーション能力
  • 異なる開発環境・ツールへの適応力
  • 大手メーカーの開発プロセスを内側から見る経験
  • 幅広い業界・案件への対応力

特にキャリアの最初の数年であれば、客先常駐で経験を積むこと自体は悪い選択ではないと思います。問題は「客先常駐かどうか」ではなく、そこで身につくスキルと、自分の長期的なキャリア戦略がかみ合っているかです。

このあたりの選択肢については、客先常駐SESより中小自社開発のほうが有利な理由【AI時代を生き残るキャリア論】でも詳しく書いています。あわせて読んでみてください。

 

客先常駐の立場でも、4つのスキルを補う方法

ここからが本題です。客先常駐の立場でも、工夫次第で4つのスキルを少しずつ補っていくことはできます。私自身が試したり、周りで効果があった方法を紹介します。

ポイント

  1. 自社プロジェクトに小さくでも参加する(PM補佐・社内ライブラリ製作など)
  2. 現場で要件定義の議論に同席させてもらう
  3. 業務ドメインを意識して、同じ業界の現場に長く居続けるよう希望する
  4. 個人開発・OSS活動で新技術に触れる
  5. 転職エージェントに登録して、自分のスキルが市場でどう評価されるかを定期的に確認する

①自社プロジェクトに小さく参加する

所属会社が自社プロダクト・社内ツール・採用活動などを持っているなら、客先常駐の合間や帰社日に参加させてもらうのは有効です。社内向けのライブラリ製作やレビュー会への参加は、商流に依存しない経験になります。

②現場で要件定義の議論に同席させてもらう

現場のPMやリーダーに「要件定義の打ち合わせに見学だけでも入らせてほしい」と頼んでみると、意外と受け入れてもらえることがあります。決定権がなくても、議論を聞いているだけで要件定義の流れが身につきます。

③業務ドメインを意識して同じ業界に長く居続ける

プロジェクトをコロコロ変える指示が出たときに、可能であれば「同じ業界に残りたい」と希望を出すと、ドメイン知識が蓄積しやすくなります。金融なら金融、製造業なら製造業と決めておくのは、AI時代に効いてくる戦略です。

④個人開発・OSSで新技術に触れる

業務でAI・クラウドに触れられなくても、個人開発で手を動かすことはできます。GitHubに公開しておくと、転職時のポートフォリオにもなります。

⑤定期的に市場価値を確認する

転職エージェントに登録すると、スキルセットがどの業界・どのポジションでどう評価されるかが分かります。これは現職に残る判断材料にもなりますし、転職を決めた場合の交渉材料にもなります。今すぐ転職するかは別として、年に1回くらい市場価値を確認する習慣を持っておくと、選択肢が広がります。

なお、転職先として中小自社開発がなぜ有利になりやすいのか、逆に中小ならではの厳しさは何かについては、下記の関連記事も参考にしてみてください。

 

まとめ

客先常駐プログラマーとして働く中で身につけにくい4つのスキルを整理すると、下記の通りです。

  • プロジェクトマネジメント能力
  • 共通ライブラリ・基盤設計の能力
  • 新技術(AI・クラウド等)の実務経験
  • 業務ドメイン知識と要件定義力

特に4つ目の業務ドメイン知識と要件定義力は、AIが多くのコーディング作業を肩代わりするようになりつつある現在、相対的に価値が上がっていく可能性がある領域です。

ただしこれは、個人のスキルや努力の問題ではなく、商流とポジションの構造による傾向です。客先常駐で頑張っている方を否定する話ではありません。

そして、構造的に身につけにくいスキルでも、工夫次第で補っていく方法はあります。今日からできることもあれば、少し先を見据えて準備することもあります。無理のないペースで、自分のキャリア戦略に合わせて動いてみてください。

 

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