今回はエアビーアンドビー(Airbnb, Inc.:ABNB)について解説します。
目次
Airbnbとは
出典:sec.gov
Airbnbは、 民泊仲介サイトを運営しています。
Airbnbが管理するマーケットプレイス型ECサイトにおいて、一般人や企業がホストとなり、ゲストに対してさまざまなサービスを提供します。
ホストは、ゲストにサービスを提供して収益を得ることができ、収益の一部が手数料としてAirbnbに納められます。
ビジネスモデル
ホストが提供する家やエクスペリエンスなどのリストに対してゲストが料金を支払ってサービスを利用しますが、その際にホストとゲストから手数料を徴収しています。
2019年には、収益の63%が米国以外のリストから発生しました。
ホストが提供するサービスは、220以上の国と地域の約10万都市にある「家」「個室」「豪華な別荘」「ツリーハウス」「イグルー」「エクスペリエンス」などです。
2020年9月30日の時点で、400万以上のホスト※が、740万の利用可能な家とエクスペリエンスのリストを持っています。
※一部の個人は複数のアカウントを持っている場合があります。
このうち、560万がアクティブ(以前に1回以上予約され、現在も利用可能)なリストでした。
2019年には、5,400万人のアクティブな予約者(特定期間中に宿泊 or エクスペリエンスを予約)と、2億4,700万人の訪問済みゲスト※(特定期間中にチェックインが完了した個人とすべての共同旅行者)が存在しました。
※測定期間中に複数の旅行をするゲストは、チェックインごとに個別にカウントされます。チェックインは、旅行者や体験参加者の数に関係なく、宿泊 or エクスペリエンスの1回の予約に対するチェックインイベントを表します。
2019年の収益の84%は、1回以上のゲストのチェックインを完了した既存のホストとの宿泊(Stay)によるものでした。
2019年の収益の69%は、リピーターゲストによる宿泊(Stay)によるものでした。
手数料の獲得事例
ホスト・ゲストからの手数料の獲得事例を紹介します。
なお、ホストとゲスト間の金銭の受け渡しはすべてAirbnbプラットフォームで行われます。
例:ホストが1泊100ドルで宿を提供
①ゲストが支払う金額(GBV):合計116ドル
・ホストが設定した1泊あたりの料金:100ドル
・手数料:12ドル
・宿泊税:4ドル
②Airbnbを介してホストに支払われる金額:97ドル
・宿泊料(100ドル) - Airbnbが徴収する手数料(3ドル)
③Airbnbの利益:15ドル
・「①ゲストが支払う金額」 - 「②ホストに支払われる金額」 - 「宿泊税(4ドル)」
ほとんどの予約では、予約時にゲストからGBV全額を徴収します。
その他の予約では、ゲストは2回に分けて支払う(the Pay Less Upfront Program)ことを選択します。
ホストとゲストから徴収する手数料(service fees)は、「宿泊期間」「地域」「ホストの種類」などによって異なります。
市場機会
2020年12月時点で、SAM・TAMは次のように見積もられています。
- SAM:1.5兆ドル・・・短期宿泊(28泊未満)で1.2兆ドル、エクスペリエンスで2,390億ドル
- TAM:3.4兆ドル・・・短期宿泊(28泊未満)で1.8兆ドル、長期宿泊(28泊以上)で2,100億ドル、エクスペリエンスで1.4兆ドル
出典:sec.gov
競合
以下のとおり、民泊系のオンラインサイトなど様々な競合他社が存在します。
OTA(Online Travel Agent)
- Booking Holdings(Booking.com, KAYAK, Priceline.com, Agoda.com)
- Expedia Group(Expedia, Vrbo, HomeAway, Hotels.com, Orbitz, Travelocity)
- Trip.com Group(Ctrip.com, Trip.com, Qunar, Tongcheng-eLong, SkyScanner)
- Fliggy
- Despegar
- MakeMyTrip
- その他の地域のOTA
インターネット検索エンジン
- Google(Google Travel, Google Vacation Rental Ads)
- Baidu
- その他の地域の検索エンジン
メタ検索Webサイト
- TripAdvisor
- Trivago
- Mafengwo
- AllTheRooms.com
- Craigslist
ホテルチェーン
- Marriott
- Hilton
- Accor
- Wyndham
- InterContinental
- OYO
- Huazhu
- ブティックホテルチェーン
- 独立系ホテル
中国の短期賃貸マンション
- Tujia
- Meituan B&B
- Xiaozhu
オンラインプラットフォーム
- Viator
- GetYourGuide
- Klook
- Traveloka
- KKDay
Airbnbの業績
Airbnbの業績を紹介します。
主要なビジネス指標
Airbnb独自の主要なビジネス指標を紹介します。
Nights and Experiences Booked
Nights and Experiences Bookedは、特定期間中の宿泊(Stay)の予約総数とエクスペリエンスの予約総数の合計から、キャンセル・変更分を差し引いたものです。
年度ごとの宿泊・エクスペリエンス総数(百万)
四半期ごとの宿泊・エクスペリエンス総数(百万)
出典:sec.gov
2020年Q2はCOVID-19の影響で宿泊・エクスペリエンス総数が落ちています。
その後、リモートワークで宿泊施設を利用するという使われ方が増えたこともあり、2020年Q3に反発しました。
Gross Booking Value(GBV)
Gross Booking Value(GBV)は、特定期間中のプラットフォーム上での総予約金額です。
「ホストの収益」「サービス料金」「クリーニング料金」「税金」の合計から、その期間中に発生したキャンセル・変更分を差し引いて算出されます。
年度ごとのGross Booking Value(百万ドル)
四半期ごとのGross Booking Value(百万ドル)
出典:sec.gov
調整EBITDA
調整EBITDAは次のとおり、法人税引当金や受取利息などを調整した純利益(純損失)として定義されます。
調整EBITDAの内訳
年度ごとの調整EBITDA(百万ドル)
四半期ごとの調整EBITDA(百万ドル)
出典:sec.gov
Free Cash Flow
Free Cash Flowは次のとおりです。
Free Cash Flowの内訳
年度ごとのFree Cash Flow(百万ドル)
四半期ごとのFree Cash Flow(百万ドル)
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COVID-19下での消費者ニーズの推移
COVID-19下での消費者ニーズの推移は次のとおりです。
国内宿泊比率
短距離宿泊比率
トップ20位外の都市(宿泊先)比率
長期宿泊比率
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上記の実績より、2020年のCOVID-19の流行に伴って消費者ニーズが以下のように変化したと読み取れます。
宿泊先のニーズシフト
- 海外旅行→国内旅行
- 遠方→近場
- 人気都市(トップ20)→マイナー都市(トップ20以外)
- 長期滞在、短期滞在の割合はそれほど変化せず
地域ごとの宿泊者数・GBV・売上高
地域ごとの宿泊・エクスペリエンス総数、GBV、売上高は次のとおりです。
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それぞれの数値は、北米とEMEAで3/4近くを占めています。
また、GBVに対する宿泊・エクスペリエンス総数の比率は次のとおりです。
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季節ごとの実績
2019年度を例として、季節ごとの実績は次のとおりです。
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通常、第1・2・3四半期(特に第3四半期)の宿泊日数とエクスペリエンス数は、第4四半期よりも多くなります。
北米とEMEAの第3四半期にある旅行シーズンのピーク時に、ゲストが旅行を計画する傾向があります。
2017~2020年度の業績
2017~2020年度の業績を紹介します。
損益計算書
損益計算書は次の通りです。
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貸借対照表
貸借対照表は次の通りです。
出典:sec.gov
キャッシュフロー
キャッシュフローは次の通りです。
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投資におけるリスク
主なリスクは以下となります。
- 創業以来赤字経営が続いている。
- 売上高成長率が2018年以降は減少傾向である。
- COVID-19の流行により旅行業界全体の成長が鈍化している。
- 競合他社が多い。
- 過去に犯罪・詐欺で利用されたこともあり、犯罪・詐欺によりブランド力が低下して新たなホスト・ゲストの獲得が難しくなる。
- 220以上の国と地域で安定して事業を継続するために継続的な投資が必要であり、長期債務も抱えている。
その他の業績・参考サイト一覧
その他の業績・参考サイト一覧は次の記事にまとめています。 TradingView提供のABNBチャート エアビーアンドビー(Airbnb:ABNB)の決算・業績・参考サイト一覧を ... 続きを見る
【米国株投資】エアビーアンドビー(Airbnb:ABNB) 決算・業績・参考サイト一覧
まとめ
エアビーアンドビー(Airbnb, Inc.:ABNB)について解説しました。
AirbnbはCOVID-19の影響で2,020年上半期に業績が悪化しましたが、2020年Q3、Q4で徐々に業績が回復してきています。
とはいえ、2019年以前の成長率に戻るのかは未知数なので、焦って投資をする必要はないかと思われます。