今回はUpstartについて解説します。
目次
Upstartとは
出典:sec.gov
Upstartは、銀行パートナーに対し、ローン組成(Loan origination)の手助けをするAI貸付プラットフォーム(AI lending platform)をクラウドで提供しています。
主に無担保個人向けローンを中心に事業を展開しています。
また、ローンを希望する借り手を集めて銀行パートナーに紹介する役割も担っています。
ビジネスモデル
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Upstartは以下で収益を得ています。
- 銀行パートナーへローンを組む借り手を紹介するごとに、銀行パートナーからローン元本の3%〜4%の紹介料を獲得
- 消費者がローンを返済する際のローンサービス料金を獲得
- 銀行パートナーがUpstartのAI貸付プラットフォームを利用(*1)してローンを開始するごとに、銀行パートナーからローン額の約2%の使用料金を獲得
- ローン保有業者(銀行、または銀行からローンを買った機関投資家)から、ローン存続期間中の未払いローン元本に対して0.5%〜1%の年間サービス料を獲得
(*1)ローン申請データの収集、信用リスクの引受、検証や不正検出などのサービスを含む
その他、受取利息(Interest Income)、証券化(Securitization)の活動が売上高のごく一部を占めています。
また、Upstartのプラットフォームで促進されたローンの数は以下の通りです。
2018年 | 2019年 | 変化率 |
114,125 | 215,122 |
+88% |
2019年(1/1〜9/30) | 2020年(1/1〜9/30) | 変化率 |
136,468 | 176,983 |
+30% |
ローン保有業者
Upstartのプラットフォームを通じて組成されたローンの保有業者は以下となります。
- 銀行パートナー
- 機関投資家
なお、2020年の第3四半期の実績では、Upstartのプラットフォームを通じて発行されたローンの22%が組成元の銀行パートナーによって保持され、76%がUpstartのローン資金調達プログラムを通じて機関投資家によって購入されました。
銀行パートナー
2020年9月30日現在、Upstartのプラットフォームを通じてローンを組成する銀行パートナー数は10行です。
銀行パートナー
- Cross River Bank
- Customers Bank
- FinWise Bank
- First Federal Bank of Kansas City
- First National Bank of Omaha
- KEMBA Financial Credit Union
- TCF Bank
- Apple Bank for Savings
- Ridgewood Savings Bank
大口のパートナーであるCross River Bankにおいては、2020年9月30日から過去9か月間の実績が以下となりました。
- Upstartのプラットフォームを利用して組成(originate)されたローンの72%を組成
- Cross River Bankからの手数料収入が総売上高の65%を占めた
なお、Cross River Bankとの契約期間は、2019年1月1日から4年間の初期契約期間に加えて、この期間の終了後に追加で2年間の更新期間があります。
機関投資家
Upstartのローン資金調達プログラムに参加する機関投資家は、銀行、保険会社、40 Act funds、ヘッジファンド、プライベートエクイティファンドなどです。
また、Goldman Sachs、PIMCO、Morgan Stanley Investment Managementが管理するファンドなど、約100社の機関投資家と関係を持っています。
なお、機関投資家は以下の手段でローンを獲得しています。
ローン全体を購入する場合は、通常Upstartは購入した機関投資家とローン購入契約とローンサービス契約を結びます。
そして、機関投資家は特定の金融機関が後援するパススルー証券プログラムを通じて、パススルー証券を購入できます。
ローンで担保されたパススルー証券を購入することで、機関投資家はローンの利息を得ることができます。
また、組成後に購入されたローン全体・パススルー証券は、後に資産担保証券となってローンの利息が他の機関投資家に売却されることがあります。
AI貸付プラットフォームフォームの特徴
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銀行パートナーが利用できるAI貸付プラットフォームでは、以下の機能(Model Applications)を提供しています。
- 料金の最適化:ローン組成料金の割り当てを最適化
- 収入詐欺:借り手の収入の潜在的な詐称を定量化
- 借り手のターゲティング:ローンを必要としており、ローン承認の対象となる可能性が高い消費者を特定
- ローン契約の拡張:短期間に複数のローンを組む可能性のある消費者を特定
- 前払い予測:消費者が当初の予定よりも早くローンの支払いを行う可能性を定量化
- 個人情報詐欺:ローン申請者が個人情報を詐称するリスクを定量化
- 時間区切りのデフォルト予測:ローン期間の各期間における債務不履行(デフォルト)の可能性を定量化
上記の機能を実現しているAIモデルは、さまざまな方法でリスクを定量化・削減するとともに、ローン組成における自動化・コンバージョン(funnel conversion)の割合を向上させます。
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次に、AIモデルの特徴を紹介します。
特徴量変数(Variables)
AIモデルの特徴量変数は、2014年は23個でしたが、2020年9月30日時点で1,600以上に増加しました。
この変数には以下の要素が含まれています。
- 信用の経験(credit experience)
- 雇用(employment)
- 学歴(educational history)
- 銀行口座での取引(bank account transactions)
- 生活費(cost of living)
- ローン申し込みの相互作用(loan application interactions)
訓練(教師)データ(Training Data)
2020年9月30日の時点で、返済の成功・延滞など900万以上のローン返済イベントを訓練データとして、AIモデルを訓練しています。
UpstartのAIモデルでは、ローンの元本が未払いであっても返済データから学習するため、モデルをリアルタイムで改善できます。
モデリング手法
元々は、ロジスティック回帰(logistic regression)を中心にAIモデルを構築していました。
訓練データの増加に伴って高性能のモデリング手法を扱えるようになり、最近では確率的勾配ブースティング(stochastic gradient boosting)が採用されています。
ローンの借り手(消費者)
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消費者は、Upstartのプラットフォームを通して以下の無担保個人ローンを組むことができます。
- ローンできる総金額:通常、1,000ドル〜50,000ドル
- APR:通常、約6.5%〜35.99%
- ローンの期間:通常、3年〜5年(前払いペナルティなし、毎月払い)
ローンは、「Upstart.com」または「銀行パートナー自身のWebサイトにあるホワイトラベル商品」で見つけることができます。
Upstart.comでローンを申請する大多数の消費者は、ローン情報収集サイトのCredit KarmaでUpstart.comについて学び、Upstart.comにアクセスしてきます。
また、ダイレクトメールによる集客でも多くの消費者を集めています。
ローン申請・返済の流れ
Upstart.comには、モバイル対応のWebアプリケーションが構築されており、ローン申請・返済の流れは以下となります。
なお、銀行パートナーのWebサイトで提供されるホワイトラベル商品でも同様の流れになります。
- 金利(rate)の問い合わせ—まず、消費者はオンラインアンケートで基本的な個人情報、学歴、職歴などの質問に回答(5分以内)します。
- オファーの提示—消費者が承認されると、Upstart.comの銀行パートナーの1つからローンのオファーが提示されます。消費者は通常、さまざまな金額や条件のローンの潜在的な金利(rate)と手数料を確認できます。金利の問い合わせが銀行パートナーのWebサイトで行われた場合、消費者にはその特定の銀行パートナーからのローンの申し出のみが表示されます。
- 確認—消費者が提示されたローンを選択した場合、本人情報、雇用状況、収入、学歴、銀行口座情報など、消費者から提供された情報の確認に進みます。多くの場合、この手順でドキュメントのアップロードや消費者への電話は必要なく、自動的かつ即座に行われますが、不正リスクを伴うと判断された場合はより広範な検証プロセスがあります。
- ローン資金調達—検証プロセスを正常に完了し、ローンの条件に同意した消費者の場合、通常、翌営業日に銀行パートナーがローンで借りるお金を消費者の銀行口座に振り込みます。
- ローン返済—ローンを受け入れた消費者は、消費者が返済を管理できるサービスポータルに誘導されます。毎月の支払い日は調整可能です。また、必要に応じて1回限りの前払いやその他の調整を行うこともできます。
参入マーケット
Upstartが参入している消費者信用業界は、2019年4月〜2020年3月に3.6兆ドルの消費者信用が生まれるなど、米国経済の基礎となっています。
しかし、2019年12月に完了したUpstartの調査によると、ローンを組んだアメリカ人の5人に4人が債務不履行(デフォルト)をしたことはありませんが、プライムクレジット(VantageScoresが720以上のクレジットレポート)をもつ人は、アメリカ人の半数未満です。
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また、高いクレジットスコアを持つ消費者においても、債務不履行を起こす借り手からの損失の埋め合わせのため、ローンの支払額が高くなっています。
このような状況において、UpstartはAIレンディングプラットフォームを銀行パートナーに提供し、承認率の向上や金利の低下を実現できるローンの組成を促進しています。
Upstartは、消費者信用業界でも、最も急成長しているセグメントの1つである無担保個人ローン市場に焦点を当ててきています。
2019年4月〜2020年3月の間、1,180億ドルの米国の無担保個人ローンが組成され、前年度から8%増加しました。
そして、2019年4月〜2020年3月の間、Upstartは市場全体の5%未満の35億ドルの無担保個人ローンの組成を促進しました。
無担保個人ローンで市場シェアを得る機会が大きくあることに加え、UpstartのAI技術を活用して米国の自動車ローン、クレジットカード、住宅ローン市場も開拓できる立場にいます。
2019年4月〜2020年3月の間、米国の自動車ローンの組成は6,250億ドル、米国のクレジットカードの組成は3,630億ドル、米国の住宅ローンの組成は2.5兆ドルでした。
Upstartは、2020年6月にUpstartのプラットフォームで自動車ローンの提供を始め、2020年9月に最初の自動車ローンが開始されました。
長期的には、学生ローン、POS(point-of-sales)ローン、HELOCでも市場シェアを獲得できる見込みです。
Upstartの業績
Upstartの業績を紹介します。
2019、2020年度の9ヶ月間の業績
2019、2020年度の9月間(1/1〜9/30)のそれぞれの業績を紹介します。
売上高
売上高は次の通りです。
2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
1億161.7万ドル |
1億4,670.6万ドル |
営業利益
営業利益は次の通りです。
2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
-809.1万ドル |
137.2万ドル |
純利益
純利益は次の通りです。
2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
-651.7万ドル |
495.6万ドル |
EPS
EPSは次の通りです。
2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
-0.46ドル | ー |
キャッシュフロー
キャッシュフローは次の通りです。
項目 | 2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
営業キャッシュフロー | 2,102.7万ドル |
-5,281.7万ドル |
投資キャッシュフロー | 5,352.0万ドル | 1億2,771.0万ドル |
財務キャッシュフロー | -9,673.3万ドル |
-4,431.2万ドル |
営業キャッシュフローマージンは次の通りです。
2019年(9ヶ月間) | 2020年(9ヶ月間) |
20.6% | -36.0% |
四半期ごとの業績
四半期ごとの業績の推移を紹介します。
売上高・純利益
売上高(Total revenue)・純利益(Net loss)の推移は以下の通りです。
Contribution profit・Adjusted EBITDA
貢献利益(Contribution profit)・Adjusted EBITDAの推移は以下の通りです。
なお、貢献利益は以下の「Revenue from fees, net」-「Total direct expenses」で算出されます。
【手数料収益】
【直接経費】
Number of Loans Transacted・Conversion Rate・Percentage of Loans Fully Automated
取引されたローンの数(Number of Loans Transacted)、コンバージョン率(Conversion Rate)、自動化されたローンの割合(Percentage of Loans Fully Automated)の推移は以下の通りです。
コンバージョン率とは
コンバージョン率は、期間中に取引されたローンの数を、「消費者からの金利(rate)の問い合わせ」の数で割ることで算出されます。
自動化されたローンの割合とは
自動化されたローンの割合は、人の関与なしに「消費者からの金利(rate)の問い合わせ」から「銀行によるローン資金調達」まで行ったローンの数を、取引されたローン数(Number of Loans Transacted)で割ることで算出されます。
投資におけるリスク
主なリスクは以下となります。
気になるリスク
- 2020年のCOVID-19の流行により、銀行によるローン承認条件の引き締めやローン組成の一時停止・機関投資家からのローン資金の減少などが発生した。
- Upstartのプラットフォームで促進されたローン総数と売上高の大部分(8割以上)は、Cross River Bankと他の1行の銀行パートナーが占めている。
- 新しい銀行パートナーとの契約締結には長い時間(通常6〜15か月)がかかる。
- Credit Karmaを通じてローン組成につながるケースが多く(2020年9月30日から過去9か月は全体の52%)、Credit Karmaへの依存度が強い。
- 2020年時点でのローン組成実績の大部分は無担保個人ローンであり、幅広いローン商品を用意できていない。
その他の業績・参考サイト一覧
その他の業績・参考サイト一覧は次の記事にまとめています。 TradingView提供のUPSTチャート アップスタート・ホールディングス(Upstart Holdings:UPS ... 続きを見る
【米国株投資】アップスタート・ホールディングス(Upstart Holdings:UPST) 決算・業績・参考サイト一覧
まとめ
今回はUpstartについて解説しました。
2020年第二四半期の売上高にも現れているように、Upstartの業績は銀行の経営状態に依存する部分が大きいので、投資の難易度も高そうです。