今回はC3.aiについて解説します。
目次
C3.aiとは
C3.aiは、企業向けのAIアプリケーションやAIアプリケーションの開発環境・ランタイム環境を提供しています。
提供サービス
- C3 AI Suite
- C3 AI Applications
- C3.ai Ex Machina
C3 AI Suite
出典:sec.gov
企業向けのAIアプリケーションの開発環境・ランタイム環境であり、PaaS(Platform-as-a-Service)で提供されます。
あらゆるタイプAIアプリケーションを設計、開発、運用するための開発スイートです。
スイート(Suite)とは
「スイート(Suite)」とは一式、一揃いの意味です。
有名なスイートの例として、Microsoft ExcelやMicrosoft WordなどのOffice製品一式をパッケージ販売しているオフィススイートがあります。
C3 AI Applications
出典:sec.gov
さまざまなユースケースに対応したAIアプリケーションの提供をしています。
1〜6か月で企業の本番環境へAIアプリケーションを配置できます。
そして、AIアプリケーションは、顧客の要件を満たすように拡張およびカスタマイズできます。
以下に、製品の例としてビルド済みアプリケーションを紹介します。
ビルド済みアプリケーション
- C3 AI Inventory Optimization:原材料、仕掛品、完成品の在庫レベルを最適化
- C3 AI Supply Network Risk:サプライチェーンの運用全体にわたる混乱のリスクを可視性
- C3 AI Customer Churn Management:行動やトランザクションデータを元に顧客満足度を監視
- C3 AI Production Schedule Optimization:C3 AI制作スケジュールの最適化
- C3 AI Predictive Maintenance:資産リスクに関する洞察を提供
- C3 AI Fraud Detection:収益の漏えいや安全性の問題のイベントデータストリームのパターンを特定
- C3 AI Energy Management:企業のエネルギー消費量(二酸化炭素排出量)を可視化
業界固有機能をもつAIアプリケーション
業界固有機能をもつAIアプリケーションの例を紹介します。
金融:Financial Services
- C3 AI Smart Lending: 与信申請および承認プロセスにおいて状況に応じた洞察を提供
- C3 AI Cash Management:銀行との財務サービスなどの関係を削減・終了する可能性が最も高いクライアントを予測
- C3 AI Securities Lending Optimization:銀行による証券貸付業務の自動化・最適化を支援
- C3 AI Anti-Money Laundering:マネーロンダリング防止
製造:Manufacturing
- C3 AI Inventory Optimization:需要の変動、サプライヤーの納期、品質の問題、製品ラインの中断を分析
- C3 AI Predictive Maintenance:資産リスクに関する包括的な洞察を提供
- C3 AI Energy Management:エネルギー効率を上げるための建物の最適化、異常検出などの洞察を提供
- C3 AI Sensor Health:IoTセンサーデバイスのセンサーの障害を予測
ユーティリティ:Utilities
- C3 AI Revenue Protection: エネルギー盗難の事例を特定
- C3 AI AMI Operations: インフラストラクチャデータを統合、分析
- C3 AI Customer Engagement Portals:CRM、人口統計など複数の異なる顧客システムデータを組み合わせて顧客プロファイルを提供
石油・ガス:Oil and Gas
- C3 AI Production Optimization:AIベースの生産予測などにより大規模な上流生産を最適化
- C3 AI Reliability:生産施設および製油所における機器のパフォーマンスリスクなどに対処
- C3 AI Yield Optimization:プロセス製造の問題や改善の機会を特定
航空宇宙および防衛:Aerospace and Defense
- C3 AI Readiness:航空機のテレメトリなどのデータを統合して障害を予測
- C3AI WorkforceAnalytics:財務、商業、公的、および法執行機関の記録を効率的に解析
- C3 AI Intelligence Analysis:学術レポート、特許データベースなどから知識グラフを生成
- C3 AI Intelligence Data Fusion :異なるソースからのインテリジェンスデータの取り込み
C3.ai Ex Machina
C3.ai Ex Machinaは、スキルが不足している新規顧客のための訓練サービスです。
AI機能を活用したいが、データサイエンスの訓練を受けておらず、高度なコーディングスキルが不足している幅広いビジネスアナリストとデータアナリストを対象としたサービスです。
収益モデル
多くの大規模な多国籍企業や政府機関に対して、以下のサービスを提供して収益化をしています。
- サブスクリプション
- プロフェッショナルサービス
また、1社あたりの契約総額もかなり大きいです。
例:大規模なグローバル金融機関
- 初期契約時:180万ドル
- 1年目:3,100万ドル
- 2年目:3,900万ドル
例:政府機関
- 1年目:620万ドル
- 2年目:870万ドル
- 3年目:1,490万ドル
サブスクリプション
2020年の売上高の約86%(約1億3,500万ドル)がサブスクリプションからの売上でした。
サービス詳細
・C3 AI SuiteおよびC3 AI Applicationsのクラウドネイティブソフトウェアのサブスクリプション販売
平均契約期間:商業利用向け3年(通常)。連邦政府利用向け1年。
C3 AI CoE(中央組織)からのプレミアムスタンド対応サポート利用を含む
・使用量ベース(消費したCPU時間)でC3 AI SuiteおよびC3 AI Applications製品の利用環境を提供
所定の容量に対して前払い請求、または実際の使用量に応じて後払い請求
クラウド環境でソフトウェアを実行する顧客にはホスティング費用も請求
通常、サブスクリプション契約はキャンセルおよび返金ができません。
プロフェッショナルサービス
2020年の売上高の約14%(約2,100万ドル)がプロフェッショナルサービスからの売上でした。
サービス詳細
・C3 AI Applicationsの新規顧客展開に関するサービス
顧客のトレーニングと支援に関連するプロフェッショナルサービス料金
※通常、成果物と期間(12か月未満)の内容に応じた固定料金での契約
プロフェッショナルサービスは、オンサイトとリモートの両方で実施されます。
プロフェッショナルサービスでサポートされる内容は次の通りです。
- 顧客の訓練
- アプリケーション設計
- プロジェクト管理
- システム設計
- データモデリング
- データ統合
- アプリケーション設計
- 開発支援
- データサイエンス
- アプリケーションとC3 AI Suiteの管理をサポート
販売サイクル
見込み客を見つけて契約するまでの流れを解説します。
まず、顧客に対してC3.aiに関する製品や技術のプレゼンテーションを行い、顧客のビジネスでC3.aiの製品が利用できる箇所(ユースケース)を探します。
その後、トライアル期間での試用として、AIやデジタルトランスフォーメーションを必要とする顧客のビジネスにC3 AI Applicationsを導入して運用してもらいます。
試用例
- 確率論に基づきサプライチェーンを最適化
- 生産の最適化
- 不正の検出
- 予知保全の実施
トライアル期間は、通常5週間〜16週間に渡ります。
この試し使いが成功すると、顧客はC3 AI Applicationsのライセンスを頻繁に取得するようになります。
多くの顧客は、C3 AI Applicationsのライセンス取得後、追加のC3 AI ApplicationsやC3AIスイートのライセンスを取得します。
出典:sec.gov
時間の経過とともに、顧客は追加のC3.ai製品を購入する傾向があり、C3.aiの使用量ベースの収益も増加していきます。
顧客
出典:sec.gov
アストラゼネカやアメリカ空軍など、大規模な多国籍企業や政府機関が顧客となっています。
また、ヨーロッパ、アジア、米国のさまざまな業界でライトハウスカスタマーとの関係を確立しています。
出典:sec.gov
契約事例
以下に、顧客による実際のC3.aiサービスの使用例を紹介します。
例のように、企業向けAIアプリケーションを比較的短い期間で本番環境に展開できます。
グローバル銀行
出典:sec.gov
- ユースケース:証券貸付の最適化
- 試用期間:16週間
- 本番環境への展開期間:36週間
- 成果:毎日のトレードの追加により140億ドルの価値を創出
石油ガス会社
出典:sec.gov
- ユースケース:オフショア石油掘削装置のAI予知保全
- 試用期間:4週間
- 本番環境への展開期間:34週間
- 成果:装置のシャットダウンを回避して年間2,800万ドルの価値を創出
ヘルスケア製造
出典:sec.gov
- ユースケース:生産の最適化(最大化)
- 試用期間:なし
- 本番環境への展開期間:4週間
- 成果:生産台数が300%増加
ロイヤル・ダッチ・シェルの事例
出典:sec.gov
石油会社のロイヤル・ダッチ・シェルとの契約事例を取り上げます。
2017年に開始された最初の取り組みは、「オフショアの石油掘削装置」と「オーストラリア天然ガスユニット」の両ユニットのさまざまな資産に対する予知保全トライアルでした。
この取り組みが成功して、C3.aiとのアプリケーションライセンス契約が成立しました。
2018年の初めに両ユニットでC3 AIの予知保全アプリケーションを本番環境に導入し、さまざまな問題を解決しました。
そして、2018年半ば頃にはC3 AI Suiteのライセンスを取得し、C3 AI Suiteの使用を拡大し続けました。
2019年と2020年には多数の開発者を追加し、複数のユースケースに対応しました。
2020年、AIアプリケーション開発標準としてC3.aiを採用し、大規模なアプリケーションロードマップを計画していることを発表しました。
問題解決内容
初めは1つの油田での機器の予知保全から始まりましたが、2020年現在は、上流・下流のガス資産全体で2,500個の機器を監視しています。
この中には、世界中にわたるコンプレッサー・ポンプ・バルブの予知保全が含まれています。
たとえば、C3 AI Suiteを使用して、「822,000個のセンサーから、1週間につき約100億行のデータを分単位で取り込む機械学習モデル」を開発し、この機械学習モデルのトレーニング、実行(デプロイ)、管理をしています。
結果として、バルブの予知保全の場合、バルブが故障する前にオペレーターに警告する早期警告システムが、
- 計画外のメンテナンスコストの削減
- 生産稼働時間の増加
- 安全性の向上
- 資産の寿命延長
の手助けをしています。
C3.aiの業績
C3.aiの業績を紹介します。
2019、2020年度の業績
2019、2020年度(5/1〜4/30)のそれぞれの業績を紹介します。
売上高
売上高は次の通りです。
2019年 | 2020年 |
9,160.5万ドル |
1億5,666.6万ドル |
粗利益
粗利益(Gross profit)は次の通りです。
2019年 | 2020年 |
6,121.9万ドル |
1億1,787.9万ドル |
粗利益マージン(Gross margin)は次の通りです。
2019年 | 2020年 |
67% | 75% |
営業利益
営業利益は次の通りです。
2019年 | 2020年 |
-3,604.2万ドル |
-7,149.7万ドル |
純利益
純利益は次の通りです。
2019年 | 2020年 |
-3,334.6万ドル |
-6,937.8万ドル |
EPS
EPSは次の通りです。
2019年 | 2020年 |
-1.32ドル | -1.94ドル |
プロフォーマEPS
プロフォーマEPSは次の通りです。
2019年 | 2020年 |
ー | -0.97ドル |
キャッシュフロー
キャッシュフローは次の通りです。
項目 | 2019年 | 2020年 |
営業キャッシュフロー | -3,487.6万ドル |
-6,128.1万ドル |
フリーキャッシュフロー | -4,168.7万ドル | -6,416.0万ドル |
投資キャッシュフロー | -9,622.8万ドル | -1億2,407.3万ドル |
財務キャッシュフロー | 5,447.2万ドル |
1億1,985.1万ドル |
営業キャッシュフローマージンは次の通りです。
2019年 | 2020年 |
−38.0% | −39.1% |
四半期ごとの業績
四半期ごとの業績の推移を紹介します。
売上高・営業利益・純利益
サブスクリプション売上高(Subscriptions revenue)、プロフェッショナルサービス売上高(Professional Services revenue)、売上高(Total revenue)、純利益(Net loss)の推移は以下の通りです。
なお、サブスクリプション売上高とプロフェッショナルサービス売上高の合計が売上高(Total revenue)となります。
投資におけるリスク
主なリスクは以下となります。
気になるリスク
- 限られた数の既存の顧客から売上高のかなりの部分を占める
- サブスクリプションサービスは大規模で販売サイクルが長く、販売までにかなりの時間と費用がかかる
その他のリスク
- AI技術に精通した優秀な人材の確保が難しい。
その他の業績・参考サイト一覧
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まとめ
今回はC3.aiについて解説しました。
12月9日に上場が決まったので、私は投資をしようと考えています。
C3.aiはBtoB企業なので、業績良し悪しの確認は完全に決算頼りです。
また、2020年に入ってからは、COVID-19感染拡大の影響からか売上高の推移が横ばいになっています。
しかし、C3.aiが参入している市場の規模はかなり大きく、推定で2020年には1,740億ドル、2024年には2,710億ドルに成長すると予測されています。
2009年の設立時からAIアプリケーションのサービスを提供し続けており、先駆者としてのアドバンテージが大きいと思われるので、今後の成長が期待できそうです。